発酵コスメの基礎知識

最近、よく耳にする「発酵コスメ」。「発酵って体に良いイメージがあるけど、スキンケアにはどう活用されているの?」「従来の化粧品と何が違うの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。発酵コスメが注目を集めるのは、発酵によって元の成分にはない新たな有効成分が生まれることが期待されるから。今回は、発酵コスメの特徴やその魅力をわかりやすく紹介します。

そもそも発酵コスメとは?

発酵コスメとは、納豆やヨーグルト、味噌などでおなじみの「発酵」によって得られる成分や、発酵による代謝物を配合した化粧品のこと。発酵とは、微生物が原料の成分を分解し、新しい成分に変化させる自然のプロセス。発酵の過程を経ることで、成分の分子が小さくなり、肌になじみやすくなることも。さらに、発酵によってアミノ酸、ペプチド、ポリフェノールなどといった新たな成分も生まれることもあるため、多様な肌悩みへのアプローチが期待されます。どの微生物を使うか、どんな素材を発酵させるかによって生まれる成分も様々。発酵コスメの奥深さは、今や多くの研究や開発へとつながっています。

発酵コスメが注目される理由

発酵コスメが人気を集める理由のひとつは、食品由来の成分が多く使われていること。発酵食品に親しみのある日本人にとって、「ヘルシーでやさしい」というイメージは安心感につながります。また、昔から受け継がれてきた発酵の技術や知恵が、現代のコスメに応用されている点も魅力です。素材の力をさらに引き出す発酵の働きによって、多様な有効成分が含まれるのも嬉しいポイント。さらに、商品によりますが、発酵コスメは使用感の良さが注目されることもあります。肌になじみやすいテクスチャーやうるおい感、透明感のある印象をサポートしてくれる点なども、多くの方に選ばれる理由でしょう。

発酵成分の種類と特徴

発酵コスメとひと口にいっても、使われる有効成分は数多くあり、素材や発酵方法などによって特徴は異なります。発酵の過程で生まれる有効成分は、保湿や透明感、ハリ感などをサポートしてくれるのが大きな魅力。ここでは代表的な素材と有効成分の働きを見ていきましょう。

代表的な素材と有効成分の働き

■穀物由来(米・麦など)
アミノ酸やペプチド、ミネラル、ビタミンが含まれることが多く、肌をすこやかに保ちながら乾燥や外的刺激から守ります。うるおいを支え、しっとりとやわらかな肌へ。
 
■豆類由来(大豆など)
女性ホルモンに似た働きを持つといわれるイソフラボンを豊富に含むものもあり、年齢を重ねた肌にハリやツヤを与えるサポート成分としても人気。
 
■乳酸菌由来(ヨーグルト・乳酸菌発酵液など)
乳酸菌由来の食品に含まれることの多いアミノ酸やペプチドは、肌のうるおいバランスを整え、ターンオーバーをサポートします。
 
■酵母由来(酵母エキス、ガラクトミセスなど)
酵母由来の原料に含まれることの多いビタミンやミネラルは、透明感やハリ感のある肌印象に近づけるサポートをします。海外の人気コスメでも多く取り入れられています。
 
■植物・果実由来(ハーブ、果物発酵エキスなど)
ビタミンやポリフェノールを含むものもあり、健やかでいきいきとした肌印象へ。ナチュラル志向の方にも人気の成分です。

発酵コスメがもたらす美容効果

発酵コスメの大きな特徴は、肌になじみやすい商品が比較的多いこと。発酵の工程を経ることで分子が細かくなり、角層までスムーズに届きやすくなるという可能性が考えられます。また、発酵の過程で生まれる乳酸や酵素は、肌のターンオーバーをサポートするので、くすみやごわつきが気になる方のケアにも向いています。さらに発酵によって抗酸化作用を持つポリフェノールやビタミン類が増えるケースもあり、乾燥や紫外線など外的要因によるダメージから肌を守る心強い存在。つまり発酵コスメは、複合的な働きで幅広い肌悩みにアプローチできるスキンケアといえるのです。

肌悩みに合わせた発酵コスメの選び方

発酵コスメは種類が豊富で、「どれが自分に合うかわからない」という声もよく聞かれます。ポイントは、自分の肌質や悩みに合わせて選ぶこと。発酵コスメは継続的に使うことで、肌本来の働きをサポートしてくれるので、毎日のスキンケアに無理なく取り入れやすいものを選ぶことが大切です。

主な肌悩みとおすすめの成分

■乾燥が気になる方
 米発酵エキス(コメ発酵液、ライスパワーNo.11など)
セラミドの生成をサポートし、角層の水分保持力をキープ。乾燥が気になる方や、発酵
コスメ初心者にも取り入れやすい成分です。
 
■ハリやツヤの低下を感じる方
 豆乳発酵液(大豆イソフラボンなど)
年齢とともに気になるハリやツヤ不足のサポートに。エイジングケアのファーストステップとしてもおすすめです。
 
■肌がゆらぎやすい方
 乳酸菌発酵液(ラクトバチルス発酵液など)
肌と同じ弱酸性で常在菌のバランスをサポート。季節の変わり目や肌が不安定なときに取り入れると◎。
 
■くすみや透明感が気になる方
 酵母エキス(ガラクトミセス、サッカロミセスなど)
キメを整え、明るい印象へ導くサポート成分。韓国コスメでも人気です。
 
■年齢サインが気になる方
果実発酵エキス(ザクロ発酵エキス、柑橘系発酵液など)
ポリフェノールやビタミンが豊富なものも。健やかな印象の肌を保つサポートに。

発酵コスメを取り入れるコツと注意点

初めて発酵コスメを試す方は、いきなりライン使いするのではなく、まずは普段のスキンケアに“プラス1アイテム”から始めるのがおすすめ。化粧水や美容液など1アイテムを取り入れて、肌との相性を確かめると安心です。また、大豆や果実など原料によってはアレルギーの可能性があるため、初めて使う場合は、腕の内側などでパッチテストを行いましょう。乾燥が気になる冬は保湿力の高いタイプ、夏はさっぱりしたタイプを選ぶなど、季節や肌の状態に合わせて使い分けるのもポイント。普段のスキンケアに無理なく取り入れられるアイテムを選ぶことが、楽しみながら長く続けるコツです。

発酵コスメは、微生物の働きによって生まれる豊富な有効成分を活かしたスキンケア。乾燥やハリ不足、透明感の低下など、幅広い悩みに寄り添うアイテムとして注目されています。大切なのは、自分の肌悩みに合った成分を選び、毎日のケアに無理なく取り入れること。お気に入りのアイテムを見つけて、発酵の恵みを日々のスキンケアに取り入れてみてはいかがでしょうか。

WRITER

本田 じゅり
本田 じゅり
ライター名:本田じゅり
日本化粧品検定協会認定コスメコンシェルジュ、コスメライター。美容業界歴20年以上。『好きなことをして自由に生きる』をモットーに、現在はフリーランスとして化粧品の商品開発、コスメライター、スキンケア講師など幅広く活動中。
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